腰の痛み
人類は四足歩行から二足歩行に進化したお蔭で、腰に大きな負担がかかり、死ぬまでに全体の8割が腰痛を経験すると言われています。腰椎は椎骨が縦に積み上げられた構造をしていますが、この脊柱を背筋が支えているため、背筋が疲れて筋肉痛を起こした腰痛(筋筋膜性腰痛症)が特に若い人に多くみられます。椎骨の間には椎間板という軟骨の板があり、これが後に突き出て神経を圧迫する病気が椎間板ヘルニアです(図A-1イ:正常椎間板、ロ:椎間板ヘルニア)。腰から下肢に神経が延びているため、椎間板ヘルニアによる圧迫は腰痛だけでなく、下肢のしびれ、知覚障害、運動障害を起こすことがあります。
図A-1イ: 正常椎間板
図A-1ロ: 椎間板ヘルニア
高齢者の腰痛では、椎骨間の関節がすり減ったり椎骨自体が変形したりする変形性腰椎症が多く(図A-2イ:正常腰椎、ロ:変形性腰椎症)、骨が脆くて椎骨が潰れると激痛を発することがあります(腰椎圧迫骨折、図A-3)。椎骨の後ろは骨がトンネル(脊柱管)を作っており、この中に脊髄をはじめとする神経の束が通っています。加齢現象により脊柱管が狭くなると神経への血行が悪くなって、長時間歩けなくなる間欠性跛行という症状が出現します(腰部脊柱管狭窄症)。
図A-2イ: 正常腰椎
図A-2ロ: 変形性腰椎症